J11・・・タカクラジの助け・・・
こうして神武は、兄弟を全て失い、悲嘆の中、
残った息子タギシミミを、引き連れ、軍を進めました。
そして熊野の、荒坂津(あらさかのつ)に到着しました。
そこに、丹敷戸畔(ニシキトベ)なる賊(ぞく)がいて、
抵抗したので、殲滅しました。
その時、神が毒気(どくけ)を吐き、たちまち全員、倒れこみました。
そこへ、熊野の高倉下(タカクラジ)と言うものが、
神武に「ふつのみたま」と言う名の剣を献上しました。
タカクラジは、昨日の夢の話をしました。
「アマテラス様が、夢に出て、タケミカヅチに命令しました。
『地上は乱れ、騒がしい。もう一度降りて、退治しなさい』
タケミカヅチが答えました。
『その必要は、ありません。私が平らげた時に使った、この剣を、
下に降ろせば、大丈夫です』
朝、眼が覚めて、倉の中を見ると、この剣がありましたので、
早速、参上いたしました。」
神武は、お礼を言い「ずいぶん長い間、眠ったようだ」と言われました。
その後、兵らも目覚めました。
解説・・・
荒坂津(あらさかのつ)は、三重県南牟婁郡荒阪村二木島、
現在、熊野市二木島(にきしま)町
丹敷(にしき)は、この二木島(にきしま)の豪族と思われます。
丹(に)は水銀のことなので、神武の軍は、
水銀中毒にかかったのでは、と言う話もあります。
タカクラジの話は、日本書紀も、古事記も、ほぼ同じです。