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This is the archive for April 2011

フツヌシの派遣・・・
 142   話は 次に     移ります
      タカミムスヒは     腹を立て
      八十諸神(やそもろかみ) に     問いかける
      「今度は誰を     遣(つか)わすか」
 143   八十諸神(やそもろかみ)が     答えます
      「経津主神(フツヌシノカミ)が     良いでしょう
      彼の父は     磐筒男(イワツツノヲ)
      彼の祖父は     磐裂(イワサク) です」
 144   この時 一人     進み出る
      武甕槌(タケミカヅチ) が     進み出る
      「フツヌシだけが     豪傑(ごうけつ)で
      私は豪傑(ごうけつ)で     ないですか」
 145   タケミカヅチの     父親は
      熯速日神(ヒノハヤヒノカミ)     と申します
      祖父は甕速日(ミカハヤヒ)     曽祖父は
      稜威雄走(イツノ オハシリ)     豪傑です
 146   この申し出を     良しとして
      フツヌシに副(そ)えて     派遣する
      中つ国(なかつくに) を     平らぐため
      二人の勇者を     派遣する
 147   いよいよ二人は     出雲にある
      五十田狭(いたさ)の小浜に     天下る
      剣を 逆さに     地に刺して
      その剣先に     胡座(あぐら) 組む
 148   オオアナムチを     呼び出して
      声を荒げて     問いただす
      「我らの主(あるじ)     タカミムスヒ
      皇孫(すめみま)に この地     与えたい
 149   それで 我らを     遣わした
      平定するため     遣わした
      お前の気持は     どうなのか
      譲(ゆず)る気 あるか     返事せよ」

解説・・・
日本書紀では、フツヌシが主人公ですが、
古事記では、タケミカヅチが主人公です。
また日本書紀では、五十田狭(いたさ)の小浜ですが、
古事記では、伊耶佐(いざさ)の小浜です。
そして、出雲大社の近くの稲佐(いなさ)の浜が、
この浜だと言われています。


コトシロヌシの返答・・・
 150   無理 難題 とは     感じつつ
      オオアナムチは     答えます
      「我が子に聞いて     その後に
      しかと 返事を     いたしましょう」
 151   その時 子供の     事代主(コトシロヌシ)
      三穂(みほ)の岬で     魚釣り
      それで稲背脛(イナセハギ)     船に乗り
      返事を聞くため     出かけます
 152   コトシロヌシは     答えます
      「天つ神(あまつかみ) の     ご命令を
      父は 素直に     受けるべき
      私も抵抗     いたしません」
 153   答えて 直ぐに     海の中に
      八重 柴垣を     拵(こしら)えて
      船床 蹴って     消え去りぬ
      使いは委細(いさい)を     報告す

解説・・・
基本的には、日本書紀も、古事記と、ほぼ同じストーリーです。
但し、古事記は、この後に、タケミナカタの抵抗の話を追加しています。


国譲り・・・
 154   オオアナムチは     それを聞き
      二人に対して     答えます
      「頼りの我が子は     消え去りぬ
      私も 同様     消えましょう
 155   私が抵抗     したならば
      諸神(もろかみ) 共に     戦うが
      私が抵抗     しなければ
      誰も抵抗     いたしません」
 156   そして この国     平らげた
      時に使った     広矛(ひろほこ)を
      恭順(きょうじゅん)の意の     印にと
      二人に献上(けんじょう)     いたします
 157   「私は かって     この矛(ほこ)で
      この国の統治     成し遂げた
      天孫もまた     この矛(ほこ)を
      使えば統治     できましょう
 158   これで私は     永久(とこしえ)に
      あの世の国に     参ります」
      オオアナムチは     言い終えて
      遂に 自ら     隠れます
 159   二人の神は     この後で
      抵抗する神     打ち砕き
      中つ国(なかつくに) を     平定し
      天に上って     報告す
解説・・・
基本的には、日本書紀も、古事記と、ほぼ同じストーリーです。
但し、古事記は、この後に、出雲大社ができた理由の話を追加しています。

ここまでで、出雲神話は終りです。
古事記に比べると、実に、あっさりしています。

雉(きじ)の偵察・・・
 126   とんと帰らぬ     ワカヒコを
      タカミムスヒは     怪しんで
      無名(ななし)の 雉を     遣(つか)わして
      どんな様子か     探らせる
 127   雉(きじ)は 急いで     舞い降りて
      アメワカヒコの     門の前
      桂(かつら)の枝に    止まりきて
      中の様子を     探ります
 128   天探女(アマノサグメ) が     雉(きじ)を見つけ
      アメワカヒコに     告げ口す
      「怪しい鳥が     桂の木
      止まって こちらを     見ています」
 129   聞くや ワカヒコ     弓矢取り
      雉を目がけて     狙い射る
      矢は雉の胸     突き破り
      天上にまで     飛んでいき

ワカヒコの死・・・
 130   こともあろうに     天上の
      タカミムスヒの     前に届く
      タカミムスヒは     びっくりし
      その矢を取って     申します
 131   「この矢は以前     ワカヒコに
      与えた矢に     相違ない
      矢に血がついて     いる訳は
      国つ神たちに     使ったのか」
 132   タカミムスヒは     その矢をば
      下の国へと     投げ下ろす
      ちょうど その時     ワカヒコは
      新嘗(にいなめ) のため     仰向(あおむ)けに   
 133   そのワカヒコの     胸の上
      その矢がズブリ     刺さります
      ワカヒコ その場で     即死する
      いわゆる「返り矢」     罰(バチ) 当 る

解説・・・
基本的には、日本書紀も、古事記と、ほぼ同じストーリーです。


葬式の様子・・・
 134   ワカヒコの妻     シタデルヒメ
      泣きわめく声     天に達す
      ワカヒコの父     クニタマは
      息子の死をば     察知する
 135   それで疾風(はやて)を     遣わして
      死体を天に     上げさせる
      それから喪屋(もや)を     造らせて
      息子の葬式     始めます
 136   配膳(はいぜん)係を    雁(かり)にさせ
      掃除(そうじ)係も     雁にさせ
      米搗(こめつ)き係を     雀(すずめ)にさせ
      八日八夜(ようかはちや)の     式をする

解説・・・
日本書紀では、天上に遺体を戻して行いますが、
古事記では、地上に親戚一同が降りて来て行います。

アジスキの話・・・
 137   その葬式に     味耜高(アジスキタカ)
      彦根神(ヒコネノカミ) が     やってきた
      彼はワカヒコの     友達で
      喪(も )を 弔(とむら)いに     上って来た
 138   ところが 彼は     顔かたち
      死んだワカヒコに     そっくりで
      それでワカヒコの     親族たち
      ワカヒコが来たと     間違える
 139   「ワカヒコは まだ     生きていた」
      皆 喜んで     迎え入れ
      彼の衣服を     触ったり
      泣いて笑って     取り囲む
 140   アジスキこれに     激怒して
      「友達だからと     遠くから
      上って来たのに     死んだ人と
      間違えられて     腹が立つ」
 141   言うや 剣を     抜き放ち
      喪屋(もや)を ズタズタに     切り倒す
      材木 天から     地に落ちて
      美濃(みの)の喪山(もやま)に     なったとさ

解説・・・
基本的には、日本書紀も、古事記と、ほぼ同じストーリーです。

アマノホヒの派遣・・・
 115   それ故  義祖父(ぎそふ)の   タカミムスヒ
      八十諸神(やそもろかみ) に    問いかける
      「吾は 葦原(あしはらの)   中国(なかつくに) の
      悪(あ)しき鬼ども      平らげたい
 116   誰に やらせたら    良いだろう
      遠慮しないで     申してみよ」
      それで 神々     答えます
      「天穂日(アマノホヒ)が     良いでしょう
 117   アマノホヒ殿は     我々の
      神の中でも     豪傑(ごうけつ)です
      試してみると     良いでしょう」
      八十諸神(やそもろかみ) が    答えます
 118   選ばれた神     アマノホヒ
      中つ国(なかつくに) へと     向います
      オオアナムチが      支配する
      中つ国(なかつくに) へと     向います
 119   けれど この神      なぜかしら
      オオアナムチに      媚(こび)へつらい
      三年経っても      帰らずに
      報告さえも      してこない
 120   それで その子の    大背飯(オオソビノ)
      三熊大人(ミクマノウシ)を     遣わすが
      これまた 親に      おもねって
      報告さえも      してこない

解説・・・
基本的には、日本書紀も、古事記と、ほぼ同じストーリーです。
120は、日本書紀独自の伝承です。

アメワカヒコの派遣・・・
 121  タカミムスヒは     腹を立て
     八十諸神(やそもろかみ) に     問いかける
     「今度は誰を      遣(つか)わすか」
     八十諸神(やそもろかみ) が     答えます
 122  「天国玉(アマツクニタマ) に     子供いて
      天稚彦(アメワカヒコ) と     申します
      彼は なかなかの     剛(ごう)の者
      彼を遣わすと     良いでしょう」
 123   タカミムスヒは     ワカヒコに
      弓矢を与え     送り出す
      ところが なんと     ワカヒコも
      任務を果たさず     戻らない
 124   それどころか     ワカヒコは
      オオアナムチの     娘御(むすめご) の
      下照姫(シタデルヒメ) を     妻として
      帰る気持は     更々無し
 125   そして豪語して     言う事は
     「俺が 葦原(あしはらの)     中つ国(なかつくに) を
      治める事が     一番良い」
      遂に 居座り      帰らない

解説・・・
基本的には、日本書紀も、古事記と、ほぼ同じストーリーです。

ここからは、出雲神話の中の、国譲りの話になります。
日本書紀では、巻の第二、神代編の下(しも)の始まりです。

 111   アマテラスの子     オシホミミは
     高皇産霊(タカミムスヒノ)  尊(ミコト)の娘(こ)
     タク幡(ハタ)千千(チヂ)姫    と結婚し
     子供を一人       設(もう)けます
 112  天津(アマツ)彦彦(ヒコヒコ)   火瓊瓊杵(ホノニニギ)
     尊(ノミコト)と言う     名をつける
     この子を皇祖(みおや)の     タカミムスヒ
     特に可愛がり     育てます
 113   タカミムスヒは     時が経ち
      ニニギノミコトを     押したてて
      下の 葦原(あしはらの)   中国(なかつくに)の
      王にしたいと     望みます
 114   しかし下の国     いかんせん
      蛍火(ほたるび) の神    騒がしく
      蝿(はえ)のような神    騒がしく
      草木も うるさく     ものを言う

解説・・・
ここも、日本書紀と、古事記とでは、かなり違います。
上記、日本書紀では、外祖父のタカミムスヒが、
ニニギを地上の王にしたいと、切望したことになっています。
一方、古事記では、アマテラス自身が、自分の子孫こそ、
地上の王になるべきであると、宣言します。
どうも日本書紀は、当時、天皇よりも権力のあった、
藤原不比等におもねっているように見えます。
上記、112に、タカミムスヒを皇祖(みおや)と呼ぶのも、
怪しげです。
本来、この尊称は、外祖父につけるべきではないからです。

 104  大蛇(おろち)退治が     片付いて
     スサノヲ 妻と     暮らす為
     よい場所 求め    探します
     出雲をあちこち   探します
 105  清地(すがのち) を見つけ    申します
     「私の心は     清清(すがすが)しい」
     それで今の世も     この土地を
     清(すが) という名で     呼ぶのです
 106   ある書(ふみ)によれば     スサノヲは
      大層 喜び     歌を歌う
     「八雲(やぐも)立つ 出雲 八重垣   妻ごめに
     八重垣作る      その八重垣よ」
 107   「沸き立つ雲よ     妻を守り
      八重垣作って     くれたようだ」
     こうしてスサノヲ     清(すが)の地に
     宮を造って     住まわれる

解説・・・
基本的には、日本書紀も、古事記と、ほぼ同じストーリーです。
ところで、上記106の、ある書(ふみ)とは、
一体どんな書物だったのでしょう。
古事記にも、載っているのだから、
ひょっとして、古事記のことでしょうか。

大己貴神(オオアナムチノカミ) 誕生・・・
 108   クシイナダヒメと     スサノヲは
      夫婦の契り      結びます
      そして二人の     間には
      大己貴神(オオアナムチノカミ)     生まれます
 109   それでスサノヲ     申します
      「我が子の宮の     首(つかさ) には
      アシナヅチと     テナヅチよ
      お前達が      相応(ふさわ)しい」
 110   そして二人に     名を与える
     「稲田宮主(イナダノミヤヌシ)     神(ノカミ)」と言う
      スサノヲ 出雲で     事(こと )を遂(と)げ
      遂に根の国へ     退(の)かれます

解説・・・
日本書紀と、古事記とで、最も違う部分が、この箇所です。
上記の通り、日本書紀では、オオアナムチ、即ちオオクニヌシは、
スサノヲと、クシイナダヒメとの子と書いてあります。
ところが、古事記では、オオアナムチは、
スサノヲの六世の孫となっており、
その間の系図まで、ご丁寧に、載せてあります。

そして、そして、神話のストーリーとして、
古事記では、この後、オオクニヌシの数々の物語、
因幡の白兎を初め、赤猪の話、
根の国での数々の試練の物語、
ヌナカワヒメとの恋物語、
スクナヒコナとの国づくり物語、などなど。
これらが、全て、カットされています。

大蛇(おろち)退治・・・
 95   スサノヲ 直ちに     少女(おとめ)をば 
     櫛(くし)に化けさせ     ミズラに挿す
     こうしておいて     スサノヲは
     老翁(おきな)たちに    指示をする
 96   最初に醸(か)んだ     酒を造り
     仮の桟敷(さじき)を     八つ作り
     一つ一つに     酒樽(さかだる) 置き
     それに なみなみ     酒を注(つ)ぐ
 97   こうして準備     整えて
     待つこと暫(しば)し     大蛇(おろち)来る
     大蛇(おろち) の姿     恐ろしい
     頭も 尻尾も     八つあり
 98   目はホオヅキの     赤い色
     背には 松や     柏(かしわ)の木
     八つの丘と     谷 跨(また)ぎ
     ノソリノソリと     這(は)い回る
99 やがて酒樽に   近づいて
 その各々に     頭 入れ
     グビリグビリと     酒を飲み
     酔いに酔って     眠ります
 100 すかさずスサノヲ     剣を抜き
     大蛇をズタズタ     切り殺す
     尾を切るときに     何かしら
     物に当って     刃(は)が欠ける

宝剣現る・・・
 101  不思議に思い    尾を割(さ)いて
      よくよく見れば     剣(つるぎ) 有り
     これぞ いわゆる     「草薙(くさなぎ)の
     剣(つるぎ)」という名の    名刀だ
 102   ある書(ふみ)によれば     元々は
     「天叢雲(あめのむらくもの)   剣(つるぎ)」 と言う
     大蛇の回りに       漂える
     雲があったので     ついた名だ
 103  スサノヲ喜び     申します
     「これは宝の     剣(つるぎ) なり
     私が持つのは    畏(おそ)れ多い
     アマテラス様に     差し上げよう」

解説・・・
基本的には、日本書紀も、古事記と、ほぼ同じストーリーです。

ここから、いわゆる出雲(いずも)神話が始まります。

スサノヲ出雲へ・・・
 88   こうしてスサノヲ     追放され
     出雲(いずも)の国に     やってきて
     簛(ひ)の川上に     着いた時
     人の泣く声     耳にする
 89   泣き声の方に     近寄ると
     そこに老翁(おきな)と   老婆(おみな)あり
     中に一人の     少女(おとめ) 置き
     いたく悲しみ     泣いている
 90   スサノヲ二人に     尋ねます
     「お前達は     誰なのか
     どうして そんなに     泣いている」
     老翁(おきな)が それに     答えます

八岐大蛇(やまたのおろち)・・・
 91   「私は ここの     国(くに)つ神
     名は脚摩乳(アシナヅチ)     と申します
     妻は手摩乳(テナヅチ)     と申します
     この少女(おとめ)は     我らの子
 92   奇稲田姫(クシイナダヒメ)     と申します
     我らに 八人     娘  いたが
     八岐大蛇(やまたのおろち)     やってきて
     毎年 一人     呑(の)み込んで
 93   最後の一人が     この子です
     今年も大蛇(おろち)が     やってくる
     助ける手だて     ありません
     だから こうして     泣いてます」
 94   スサノヲ そこで     申します
     「ならば少女(おとめ)を     わしにくれ」
     老翁(おきな)が これに     答えます
     「どうぞ あなたに     差し上げよう」

解説・・・
基本的には、日本書紀も、古事記と、ほぼ同じストーリーです。