はじめに
今回から、日本書紀の神話について、紹介したいと思います。
私の著書「古事記 神々の詩」と同じ手法の、七五調四行詩で、
翻訳し、紹介します。
古事記と日本書紀では、微妙に違いますので、
その違いも紹介したいと思います。
古事記は712年、日本書紀は720年に、できました。
たった8年の間に、何故二つの本ができたのでしょうか。
私の推測は、次のようです。
そもそも天武天皇が歴史書を作れと命令し、宮廷に、
歴史書編纂室のようなものができたのが、681年ですので、
それから30年も経ってしまっていました。
それで、あせった元明天皇(女帝)が、
「とにかく一冊の本にして、私にみせなさい。」
と命令されて、急いで作ったのが、古事記です。
一方、編纂室のメンバーも、30年の間に、
どんな構成にするか、どんな内容にするか、
どんな文体にするか、色々議論し、
構想が練られていたのですが、
古事記に刺激されて、いよいよ本にせねば、と決心し、
作ったのが、日本書紀だと思います。
前置きは、とりあえず、このくらいにして、
それでは、はじめます。
天地創造
1 遥(はる)かに 遠い 古(いにしえ)は
天地(あめつち) 未(いま)だ 分かれずに
陰陽(いんよう) 未(いま)だ 分かれずに
混沌(こんとん)なること 黄味(きみ)のよう
2 やがて微(かす)かに 兆(きざ)しあり
清(きよ)く 軽(かる)きもの 天(てん)となり
濁(にご)り 重(おも)きもの 地(つち)となる
但(ただ)し 未(いま)だ 固(かた)まらず
3 先(さき)に 天(てん)が できあがり
その後(あと) 地(つち)が できあがる
時(とき)は 過ぎ行き 天の中
やがて 神(かみ)か゛ 現(あらわ)れる
解説・・・
書き方は、陰陽道(おんみょうどう)の思想で書かれています。
と言うことは、この頃の日本では、韓国や中国から渡来の学者が、
日本人に漢字や中国語を教え、
同時に、仏教、儒教、道教、陰陽道も教えたと思われます。
また、日本書紀は、完全な漢文体で書かれ、
中国人が読んでも分るように書かれています。
しかも、中国の有名な古典の文章をまねて、
書いているところがあります。
また、渡来した中国の学者が書いたところと、
勉強した日本人の学者が書いたところがあるようです。
研究すれば、ちょうど英国人が書いた英語と、
日本人が書いた英語が、微妙に違うのが分るのと同じです。
一方、古事記は、太(おおの)安万侶(やすまろ)が、
一人で、わずか四ヶ月で書き上げたものです。
全て漢字で書かれてはいますが、
文体は、漢文のような日本語のような、
中国人には読めないものです。