フツヌシの派遣・・・
142 話は 次に 移ります
タカミムスヒは 腹を立て
八十諸神(やそもろかみ) に 問いかける
「今度は誰を 遣(つか)わすか」
143 八十諸神(やそもろかみ)が 答えます
「経津主神(フツヌシノカミ)が 良いでしょう
彼の父は 磐筒男(イワツツノヲ)
彼の祖父は 磐裂(イワサク) です」
144 この時 一人 進み出る
武甕槌(タケミカヅチ) が 進み出る
「フツヌシだけが 豪傑(ごうけつ)で
私は豪傑(ごうけつ)で ないですか」
145 タケミカヅチの 父親は
熯速日神(ヒノハヤヒノカミ) と申します
祖父は甕速日(ミカハヤヒ) 曽祖父は
稜威雄走(イツノ オハシリ) 豪傑です
146 この申し出を 良しとして
フツヌシに副(そ)えて 派遣する
中つ国(なかつくに) を 平らぐため
二人の勇者を 派遣する
147 いよいよ二人は 出雲にある
五十田狭(いたさ)の小浜に 天下る
剣を 逆さに 地に刺して
その剣先に 胡座(あぐら) 組む
148 オオアナムチを 呼び出して
声を荒げて 問いただす
「我らの主(あるじ) タカミムスヒ
皇孫(すめみま)に この地 与えたい
149 それで 我らを 遣わした
平定するため 遣わした
お前の気持は どうなのか
譲(ゆず)る気 あるか 返事せよ」
解説・・・
日本書紀では、フツヌシが主人公ですが、
古事記では、タケミカヅチが主人公です。
また日本書紀では、五十田狭(いたさ)の小浜ですが、
古事記では、伊耶佐(いざさ)の小浜です。
そして、出雲大社の近くの稲佐(いなさ)の浜が、
この浜だと言われています。
コトシロヌシの返答・・・
150 無理 難題 とは 感じつつ
オオアナムチは 答えます
「我が子に聞いて その後に
しかと 返事を いたしましょう」
151 その時 子供の 事代主(コトシロヌシ)
三穂(みほ)の岬で 魚釣り
それで稲背脛(イナセハギ) 船に乗り
返事を聞くため 出かけます
152 コトシロヌシは 答えます
「天つ神(あまつかみ) の ご命令を
父は 素直に 受けるべき
私も抵抗 いたしません」
153 答えて 直ぐに 海の中に
八重 柴垣を 拵(こしら)えて
船床 蹴って 消え去りぬ
使いは委細(いさい)を 報告す
解説・・・
基本的には、日本書紀も、古事記と、ほぼ同じストーリーです。
但し、古事記は、この後に、タケミナカタの抵抗の話を追加しています。
国譲り・・・
154 オオアナムチは それを聞き
二人に対して 答えます
「頼りの我が子は 消え去りぬ
私も 同様 消えましょう
155 私が抵抗 したならば
諸神(もろかみ) 共に 戦うが
私が抵抗 しなければ
誰も抵抗 いたしません」
156 そして この国 平らげた
時に使った 広矛(ひろほこ)を
恭順(きょうじゅん)の意の 印にと
二人に献上(けんじょう) いたします
157 「私は かって この矛(ほこ)で
この国の統治 成し遂げた
天孫もまた この矛(ほこ)を
使えば統治 できましょう
158 これで私は 永久(とこしえ)に
あの世の国に 参ります」
オオアナムチは 言い終えて
遂に 自ら 隠れます
159 二人の神は この後で
抵抗する神 打ち砕き
中つ国(なかつくに) を 平定し
天に上って 報告す
解説・・・
基本的には、日本書紀も、古事記と、ほぼ同じストーリーです。
但し、古事記は、この後に、出雲大社ができた理由の話を追加しています。
ここまでで、出雲神話は終りです。
古事記に比べると、実に、あっさりしています。