日神(ひのかみ)誕生・・・
29 ここで お二人 相談す
「吾らは 既に 大八洲(おおやしま)や
山川 草木を 生み出した
今度は 天下の 主(ぬし)を 生もう」
30 まずは 「日神(ひのかみ)」 生みまする
大日孁貴(オオヒルメノムチ) とも言います
ある本によれば 天照(アマテラス)
大神(オオミカミ)とも 言われます
31 日の神の 光 麗(うるわ)しく
国の隅々に 照り輝く
二人は 大層 喜んで
「我が子 沢山 生んだけど
32 こんなに 良い子は 又とない
ここに置くのは 畏(おそ)れ多い
すぐ 天上に 送り上げ
天上の主(ぬし)を まかせよう」
33 この当時 天と 地の間
さほど 遠くは なかったので
天柱(あめのはしら)を 登らせて
天上世界に 送り出す
解説・・・
このあたりが、日本書紀の神話と、古事記の神話の、
最も大きく違うところです。
古事記では、禊ぎの時に、イザナキの左目から、
アマテラスが生まれるのですが、
日本書紀では、イザナミは死ななくて、
イザナキ・イザナミ二人で、アマテラスを生むのです。
それと、これも大きな違いですが、名前の扱い方です。
古事記では、アマテラスであり、何回も登場しますが、
日本書紀では、日の神、オオヒルメノムチであり、
アマテラスは、参考程度の名前なのです。
天武天皇は、伊勢のアマテラスのご加護により、
天皇になれた筈なのに、日本書紀は、
どうして、こんな扱い方をするのか、不思議です。
月の神誕生・・・
34 次に「月の神」 生まれます
月の光りも 麗(うるわ)しく
美しきこと 日に続く
これまた天に 送り出す
蛭児(ひるこ)誕生・・・
35 次に 蛭児(ひるこ)が 生まれます
三年 経っても 足立たず
それで この児を 船に乗せ
風のまにまに 放(はな)ちます
素戔嗚(スサノヲ)誕生・・・
36 次に 素戔嗚(スサノヲ) 生まれます
このスサノヲの 行状(ぎょうじょう)は
荒々しくて 残忍(ざんにん)で
泣きわめきつつ 民を殺す
37 更に 青山を 枯(か)れ山に
父母(ちちはは) これに 困り果て
「お前の態度は 極道(ごくどう)だ
宇宙の 主(ぬし)に 向いてない
38 遠い彼方(かなた)の 根国(ねのくに)に
行ってしまえ」と 追放す
荒ぶる神の スサノヲは
かくて 根国(ねのくに)へ 神遂(かむやら)い
解説・・・
月の神とスサノヲの扱い方は、古事記も日本書紀も、
ほぼ同じです。
蛭児(ひるこ)の扱いが違っていて、
古事記では、国生みの最初に出ます。
日本書紀が、何故、ここに挿入したのか、不思議です。