ここで、日本書紀の構成について、お話しましょう。
本来、最初に解説すべきですが、解説が長々と続くと、
かえって本文を読む気がしなくなるのではと心配し、
とりあえず、5回までを、前回までに、お話したわけです。
日本書紀全体は、30巻もある、日本で最初の本格的歴史書です。
このうち、神話は、第1巻と第2巻との2巻です。
第3巻からは、天皇の話になります。
ちなみに、古事記は、現存する日本最古の歴史書です。
3巻で構成されており、そのうちの第1巻が神話です。
日本書紀の書き方は、次のようです。
最初に本文が書かれ、一段落したところで、
その段落に関係した異伝(本文と異なる伝承)を載せています。
異伝は「一書(あるふみ)に曰(いわ)く」で始まる文章です。
そして異伝が終わると、次の段落の本文が始まります。
それで学者は、この段落を「第何段」として表します。
日本書紀の神話は、全部で11段に分かれています。
第一巻は第1段から第8段までです。
第二巻は第9段から第11段までです。
段の長さは、まちまちで、ほんの数行の短いものもあります。
これまで私がお話したのは、第1段から第5段までです。
私の七五調四行詩の番号で言うと、
1から7までが第1段、8と9が第2段、10と11が第3段、
12から27までが第4段、28から38までが第5段です。
格段に載せてある異伝の数は次のようです。
第1段には、六つの異伝があります。
第2段には、二つの異伝があります。
第3段には、一つの異伝があります。
第4段には、十の異伝があります。
第5段には、十一の異伝があります。
異伝の長さもまちまちで、大変長い異伝もあります。
これで分ることは、古事記・日本書紀以前に、
最低でも、11冊の何らかの本が作られていた、と言うことです。
残念ながら、それらは、現存しません。
以上のような構成になっているので、
私は、日本書紀を読み進める時、頭がおかしくなります。
今、自分が、本文を読んでいるのか、異伝を読んでいるのか、
時々、分らなくなります。
どの話が本文で、どの話が異伝か、時々、頭が混乱します。
それで今回は、本文だけを七五調四行詩にして、
皆さんに読んでもらいます。
そして異伝は、主なことだけ、解説の中で簡単に、
説明することにしました。
なお、私が参考にした本は二冊です。
一つは岩波文庫の坂本太郎等「日本書紀」です。
この本は詳細な注釈がありますが、現代語訳がありません。
もう一つは、講談社学術文庫の宇治谷孟「日本書紀」です。
こちらは、全現代語訳ですが、注釈は一切ありません。
この二つを見ながら、七五調四行詩に翻訳したのが、
私の作品です。
さて、神話の話に戻り、
日本書紀本文では、イザナミが死んで黄泉(よみ)の国へ
行くという古事記のストーリーは全く無視されていますが、
異伝では、三つの異伝が、黄泉国を取り扱っています。
第5段には、11も異伝がありますが、そのうち、
第6、第9、第10に、黄泉国の話があります。
黄泉国の話は、古事記の専売特許ではありません。