故郷への帰還・・・
198 トヨタマヒメが 気がついて
父の 海神(わたつみ) に 相談す
「きっと故郷(ふるさと) 恋しくて
溜め息つかれた ようですよ」
199 ヒコホホデミに ワタツミは
優しい言葉を かけなさる
「もし 郷(くに)へ戻る お気持なら
我らが送って 差し上げよう」
200 例の釣針 渡しつつ
ワタツミ 策を 授けます
「この釣針を 兄上に
返す時には 唱えなさい
201 そっと『貧鉤(マジチ)』と 唱えなさい
この呪文(じゅもん)は 兄上が
貧しくなるとの 呪文です
唱えた後に 渡しなさい」
解説・・・
基本的には、日本書紀も、古事記と、ほぼ同じストーリーです。
魔法の玉・・・
202 それから ワタツミ お土産(みやげ) に
潮満瓊(しおみつたま) と 潮涸瓊(しおひたま)
ヒコホホデミに 奉(たてまつ)り
使う方法 教えます
203 「潮満瓊(しおみつたま)を 使われると
兄上にだけ 潮が満ち
兄上 溺(おぼ)れて 助けを乞う
こうして兄上 懲(こ)らしめる
204 潮涸瓊(しおひたま)を 使われると
潮はたちまち 引いてゆく
こうして兄上 悩ませば
兄上 あなたに 降参 す」
解説・・・
基本的には、日本書紀も、古事記と、ほぼ同じストーリーです。
出発の時・・・
205 ヒコホホデミが お礼を言い
いよいよ帰る その時に
トヨタマ姫が 申します
「私に あなたの 子ができた
206 まもなく産む日 やってくる
波風強い 日を選び
海辺に 急いで 参ります
産屋(うぶや)を ご用意 くださいな」
解説・・・
ここは、日本書紀だけに、書いてあります。
海幸降参・・・
207 ヒコホホデミは ようやくに
故郷(こきょう)の 宮に 戻られて
釣針を 兄の ホノスソリに
呪文を唱えて 返します
208 その後 ワタツミの 言う通り
ホノスソリは 貧乏に
そして とうとう 弟に
「お仕えします」と 降参す
209 ヒコホホデミは 兄を許し
ホノスソリは この後に
吾田君(あたのきみ) 小橋(おばし) の祖となる
即ち 隼人(はやと)の 祖となりぬ
解説・・・
基本的には、日本書紀も、古事記と、ほぼ同じストーリーです。
吾田君(あたのきみ) 小橋(おばし)の祖というのは、
日本書紀だけに、書いてあります。